全速
「全速で走る」……出せる限りのスピードで走る。
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でも、多くの国語辞典には「全速」は掲載されていない。
「全速」は「全速力」の略語だから。
- 全速力 ゼンソクリョク 出せる最大の速力。フルスピード。「−で走る」
- 全速 ゼンソク 「全速力」の略。
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では「全速力」の説明の中に出てきた「速力」って何だろう。
- 速力 ソクリョク 進むはやさ。速度。スピード。
つまり「全速力」は、「全・速力」と分けられる。
出せる限りの(全)スピード(速力)ってな訳だ!!
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「疾走」とどこが違うの?という疑問が沸くかもしれない。
- 疾走 シッソウ 非常に速く走ること。
「疾」は「矢のようにはやく進む」という意味を持つ。
(↑は、1月3日の記事でも書きました)
「疾走」と「全速力」との違いはちょっとわかりにくいので、考察してみた。
場面によっては「全速力」を用いることができても「疾走」を用いることができない、っつうことがわかった。
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- ボルトは、コースを全速力で駆け抜けた。
- ボルトは、コースを疾走した。
- ライオンが、獲物を全速力で追いかけた。
- ライオンが、獲物に向かって疾走した。
これらは「走っているもの」のスピードが「矢のようにはやい」から「疾」の漢字を使うことができる。
「全速力」も「疾走」も適切に用いることができる。
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では、以下の例ではどうだろうか。
「走っているもの」が「あまり、はやくない」場合。
- チワワが、飼い主のもとへ全速力で駆けてきた。
- チワワが、飼い主のもとへ疾走した。
- まるまる太ったAくんが、全速力で100メートル走った。
- まるまる太ったAくんが、100メートルを疾走した。
あまりはやくない場合には「全速力」は使えるが「疾走」は使えないことがわかる。
「全速力」は、遅いなりに「出せる限りのスピードを出した」。
「疾走」は、速くなくてはいけない。