オキニ

「お気に入り」を略した言葉である。
「オキニ」と略すと、「お気に入り」の物がさらに身近に感じられるというもんだ。
では、「お気に入り」っていったい何なんだろう・・・?
インターネットエクスプローラにも「お気に入り」ってあるけど・・・。
早速、広辞苑で「おきにいり(御気に入り)」を調べてみると、
「『気に入り』を丁寧に言う語」、とあった。
そこで「気に入り」「気に入る」を調べてみると、
「自分の心によくかなうこと、人。」「自分の好みや望みに合う。好きになる。」とある。
なので、丁寧に言おうとしなければ、「お気に入り」でなく「気に入り」「気に入る」と言っていいということが分かる。
「俺の気に入りの店は〜」「俺はこのアーティストが気に入った」となる。
つまり、「俺の気に入りの店は〜」と丁寧に言おうとすると、
「私のお気に入りのお店は〜」となる。ここでの「お」は美化語である。
また、「気に入る」にも丁寧な言い方がある。
まずは、謙譲表現。「俺はこのアーティストが気に入ったぜ」は、「私はこのアーティストが気に入りました」となる。
これが、尊敬表現になると「お気に召す」となる。
「おめぇ、この菓子気に入った?」は、「このお菓子はお気に召しましたでしょうか?」となる。
ここで注意。「お気に召されましたでしょうか?」としてしまうと二重敬語となってしまうので、「お気に召す」でOK。
ところで、よく「(お)気に入りましたでしょうか?」「(お)気に入って頂けましたでしょうか?」といった、間違った尊敬語を耳にする。
基本的に、「お気に入り」は自分に向けて、「お気に召す」は相手に向けての言葉だと心得ればOK。
また、「(お)気『の』入り」や、「(お)気『の』召すまま」という、間違った言葉もよく耳にする。
おそらく、ここで使われる「の」は、「が」と同じく、行動をもたらした主体の後に付く助詞として使われている物と思われる。
(私「の」、私「が」、買った本。あなた「の」、あなた「が」、見た物。など・・・)
つまり、「気が向くままに」「気の向くままに」のような言い回しが、「気の入る」「お気の召す」(間違っているのだが・・・)のように変化したということだ。
そういえば、インターネットエクスプローラの「お気に入り」は、何で「気に入り」ではなく「お気に入り」なんだろう?
「お気に入り」という言葉は、「気に入り」の丁寧表現であり、「お気に召したサイト」という言葉ほどは凝り固まっていない。
つまり、ユーザーである私たちに対する、インターネットエクスプローラによる細かい心遣いなのだ。
「お気に召したサイトを、ご自分の『お気に入り』に保存なさって、ご自由にご使用ください」という敬意の表れでもあるのだ。
最後に、もう一度書くが「オキニ」は「お気に入り」の略であって、「お気に召す」の略ではない。
「このお菓子はお気に召しましたでしょうか?」と言う代わりに、「オキニですか?」と言ってしまうと、尊敬語ではなくなってしまうからだ。